血管内レーザー焼灼術
逆流防止弁が壊れ、静脈血が逆流を起こし静脈瘤となってしまった血管に、極細のレーザーファイバーを挿入し、静脈の内側を熱で焼き、患部の血管を閉鎖させます。塞がれた静脈は、その部分に血液が流れなくなり、その後数カ月かけて繊維化し、体組織に吸収されて消えてしまいます。ストリッピング手術と同様の効果がありながら、傷口がないので出血が少なく、身体に負担の少ない治療です。下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術が行われるようになった当初は、手術後の長期データがないこともあり、この治療を行う施設は限られていました。現在では、世界中で数多くの血管内レーザー焼灼術が行われ、術後10年ほどのデータも蓄積されてきており、その安全性と有効性も確認されています。2011年から980nmのレーザーが、2014年5月には1470nmのレーザーが保険収載され、治療を受けられる機関はどんどん増えています。当院での治療も1470nmのレーザーを使用しています。
★下肢静脈瘤に対するレーザー治療
ボコボコと浮き上がる静脈瘤の原因となっている逆流が発生した静脈に細いレーザーファイバーを挿入し、レーザーで静脈の内側を熱で焼き、閉鎖させてしまう治療です。
レーザーで焼かれた静脈は収縮して閉鎖し血液の逆流がなくなります。その後数ヶ月かけて線維化していき体に吸収されるかのごとく消褪します。局所麻酔なので体への負担は軽く、傷跡は目立たず、またストリッピング手術と違って静脈は取り出しませんので後出血の危険性もほとんどありません。
レーザー治療のメリットとデメリット
手術療法と比較した場合のレーザー治療によるメリット・デメリット
○メリット
• 侵襲(体に与えるダメージ)が極めて小さい。(低侵襲治療)
• 施術時間が短く、治療回数がより少ない。
• 施術後、速やかに離院できる。
• 施術後、弾性ストッキングの長期着用が不要。
• 日常生活への復帰が速やかに行なえる。
• 傷口が少なく目立たない。
●デメリット
• 大きな拡張径の静脈瘤には治療効果が乏しい場合がある。
• 下腿の静脈瘤に対して、硬化療法や、局所切除などの追加治療が必要になることがある
当クリニックでのレーザー手術の流れ
- 手術前外来
- レーザー治療の適応があるか、手術に影響を及ぼす他の病気がないかなど、エコー、採血、心電図検査などで調べます。この時、これまでの病気や手術歴、内服薬、アレルギー(特に卵アレルギーや、麻酔薬に対するアレルギー)の有無もお聞きいたします。
- 手術当日
- 朝9時までに来院してください。水分は摂取可能です。来院された後に点滴を開始し、手術まで待機していただきます。
- 手術室に入ったら
- 眠くなる注射を開始します。それでも完全に眠ってしまうわけではありませんので、局所麻酔をして、施術を開始します。レーザー治療によるやけどを防ぐために、麻酔薬は多く使用しますので、その穿刺時の痛みがある場合があります。手術時間は片足で30分~1時間程度です。
- 手術が終わったら
- 手術後は最低30分はベッドでお休みいただきます。その後帰宅可能になりますが、ご希望に応じて休んでいただく時間を増やすことは可能ですので、ご希望をおっしゃってください。太ももに包帯が巻かれ、下腿に弾性ストッキングをはいた状態になります。
- 帰宅時
- 3日分の抗生物質と、痛み止めを処方致します。それでも痛みがあるときの場合を考え、痛み止めの座薬も処方致します。一週間後に外来受診となります。
★手術前後の注意点
・治療前の注意
1.食事
食事は摂らずに来院してください。水やお茶などは来院するまでは飲んでいただいて結構です。
2.服装
治療後は太ももまで包帯を巻くことがありますので、ゆったりとしたズボンか長めのスカートを着ておいで下さい。靴は大きめのひも靴にして下さい(女性の方も)。ジーパンや短いスカート、ハイヒールは避けて下さい。また下着の替えをお持ち下さい。
3.付き添い
原則的に付き添いの方といらして下さい。治療が終わる頃に来て一緒に帰っていただいても結構です。(お帰りの時間は治療開始予定時間の1時間半から2時間後です。)都合のつかない場合はお一人様でも結構です。
4.お薬
治療前の説明で飲まないようにと言われた薬以外は、通常どおり飲んで下さい。特に高血圧のお薬を飲まれている方は忘れないように薬を飲んでからおいで下さい。
5.交通手段
お帰りの交通手段は公共の交通手段(バス、電車)でも大丈夫です。右脚の手術をされた場合、ご自分で運転するのは避けて下さい。
6.体調
風邪等で体調が悪いときは早めに当クリニックまでご連絡下さい。体調が悪いときに無理に治療を受ける必要はありません。当日でも構いませんので遠慮なく申し出て下さい。生理は治療には特に問題となりません。
7.入浴
手術当日は入浴できませんので、入浴またはシャワーを浴びてからいらして下さい。
★手術後の注意点
1.生活
生活治療後に特に安静にする必要はありません。逆に、治療をした後にあまり動かないでいると深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)を起こしやすくなりますので、家事や買い物、散歩等、適度に動いて下さい。
2.傷の処置
傷は針穴のみで殆どありません。薄い麻酔薬を多めに使うために太ももの包帯やガーゼが濡れてくることがありますが、これは出血ではありません。真っ赤でなければ心配はありませんので、次回の診察までそのままにしておいて下さい。治療をした晩および翌日はアイスノンで太ももを冷やすようにして下さい。体が冷えたりアイスノンがない場合は冷やさなくても結構です。
3.包帯、弾性ストッキング
治療後は大腿に包帯を巻き、下腿に弾性ストッキングをはいて頂きます。帰宅後に足先が痛んだり、白くなっている場合は弾性ストッキング、包帯をゆるめて様子を見て下さい。包帯がゆるんでしまった場合は、包帯をはずして弾性ストッキングをはいて下さい。
4.痛み
鎮痛剤と化膿止め(抗生物質)を処方致しますので、自宅にお帰りになったらすぐに飲んで下さい。通常はこれで十分に痛みを抑えることができます。もし内服薬を飲んでも痛みを感じる場合は、我慢しないで、早めに座薬を使ってください。座薬は1日2回まで使っていただいてかまいません。座薬を使っても痛みが治まらないときはご連絡下さい。太ももの違和感や突っ張り感は治療後1~2週間続くことがありますが、これは異常ではありません。
5.食事、飲酒
特に食べていけないものはありません。治療後3日間はお酒を控えて下さい。お酒を飲むと痛みが強くなりやすくなり、また、脱水によって深部静脈血栓症を起こしやすくなります。
6.運動
散歩やウオーキング、軽い体操は翌日からしていただいて構いません。競技をするスポーツ(卓球、テニス、ゴルフ、バドミントン等)やダンスは治療後2週間程度は控えて下さい。
7.家事
通常の家事(炊事、洗濯、買い物等)は手術当日からしていただいて構いません。
8.旅行
1~2泊の国内旅行は治療後7日目以降、海外旅行は治療後2週間目以降に予定して下さい。
9.仕事
通常の事務系のお仕事の場合は翌日からしていただいても構いません。立ち仕事(1日8時間以上)の方は、治療後1週間は仕事の量をできるだけ減らすように心がけて下さい。事務系のお仕事でも立ち仕事でも都合がつかなければ無理に休まなくても結構です。
10.入浴
入浴は手術の次の日から可能です。
11.再診
次回の診察は通常1週間後になります。お帰りの際に受付で確認の上お帰り下さい。